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言葉で人を攻撃することは許されないのに、別の何かに代入して芸術に仕立て上げれば、それは皮肉として許される。その歪んだ正義を握りしめ、おれは絵で人間を殴り続けた。寿命はみるみる減っていった。それでも構わない、これはおれなりの復讐なのだ。
人の作品を金稼ぎに利用するやつ、「俺はお前より先に知っていた」と優越感を得るための道具にするやつ、【X】は自分の友達だと主張するやつ。ムカつくやつらはいくらでもいた。そいつらの醜さを、おれはこの手で見せつけてやった。
「うわっ、っと……」
最近立ち眩みが多くなってきた。羽根に充填された光も少ない。もう終わりが近いことが分かる。おれは有終の美を飾るための、最高傑作を描くことに苦戦していた。
こう、見た者すべてをあっと言わせるような、それこそ、誰かの人生を変えてしまうような。そんな作品を描きたいのだ。
インスピレーションがやってこない。一体どんな作品にすればいいのだろう。雄々しくて、美しくて、繊細で、深みがあって、様々な解釈ができ、人の心を鷲掴みにする魔力を持った、そんな絵を描きたい。
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