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その日、エストルフォの第二王女のエリーゼは眠るのが恐ろしくて堪らなかった。第一王女である姉のエミルが隣国に嫁いでいき、自分が何処からか婿を取ることが決まってしまったからだ。
正直、結婚なんてまだ考えられない。年齢は漸く十六となり結婚が可能となったけれど、異性と話したことは実父以外ではお付き人くらいだった。
そんな自分に結婚相手を決めろ――とは無謀すぎはしないかと、エリーゼはずっと考え続けている。
そしてその反動か分からないが、噂や都市伝説が好きだったエミルに聞かされた『夢攫い』の話を思い出したのである。
とても良い夢を見た時に掛かった声に返答をすると、永遠の悪夢に苛まれる――。
昔からある都市伝説というか、言い伝えだけれど実例はないらしい。それでも誇り高き『夢の都』の王女としては怖くて堪らなかった。
所詮幻想だと思っても、実際の頭の中では黒い渦となって思考を散漫にしていく。
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