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ナホは、そのままそっと目を閉じた。今も鮮やかにあの子の姿が浮かぶ。まるで昨日のことのように…
あれは、何年前になるか……
「真凛ちゃん」
「ハーイ」
ナホが呼ぶと真凛は何がそんなに嬉しいのか、キャッキャと手を叩いて喜んでいる。そして、先月会った時よりもしっかりとした足取りで走ってくる。
ついこの間まで赤ちゃんだと思っていたのに、時間の流れは早いと感じる。少し会わないだけで驚く程成長しているもの。
今日は真凛と何して遊ぼう。ボール遊びもいいな。
「ナーちゃん、ナーちゃん」
「真凛ちゃん、ボール遊びしようか」
「ボール、ボール」
真凛はナホの妹。まもなく三歳を迎える。どうやら、ナホのことを忘れないでいてくれたらしい。しかし、ナホが姉だと理解しているかは奇しい。けれど、それはナホにとってはどうでも良いこと。真凛に会えることが何よりも嬉しいことだから。
ナホがボールをゆっくり投げる。幼い真凛が取れるはずもなく後ろへコロコロ転がっていく。真凛はキャッキャと笑いながらボールを追いかける。
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