静謐な空気の中で

　ナホには元となる人間のモデルがいる。真凛の本当の姉で菜穂という。真凛とは１０歳違い。実際、真凛は菜穂に会ったことはない。真凛が生まれる前に、菜穂は事故にあったからだ。菜穂は瀕死の状態で救急車で運ばれたが、甲斐なく亡くなってしまった。亡き娘の死から立ち直れず塞いでしまった妻の為に、夫が研究所で開発したアンドロイドを菜穂に寄せて作成した。それが私、ナホだ。

　姿形は似ていても、中身までは同じにできない。父親は生みの親であるのでナホを可愛がってくれるけど、母親は菜穂を思い出すのかナホを見ると時折涙ぐむ。

　そんな時、真凛が賑やかに間に入ってくれる。

　真凛は大学を卒業すると父親の研究所に入所した。そして、父親の後を継ぎナホのメンテナンスやバージョンアップを受け持った。やがて真凛が宣言していた通り、一緒に露天風呂へ入れるようになったのだ。

　真凛とたくさん旅行に行った思い出がある。