静謐な空気の中で

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 でもね。人間の寿命が短いことはわかってはいたの。父親、母親、真凛まで……   真凛の寿命が尽きた時、ナホのメンテナンスは、真凛の後継のメンバーに託された。だけど丁重にお断りした。もう、ナホの存在理由が無くなってしまったから。  それでも、真凛の手に寄って行われた最後のバージョンアップが素晴らしいもので、それ以降何年もメンテナンスしなくとも、ナホの体に問題が起こることはなかった。 「真凛との約束通り、孫娘の子守もしたわよ」  楽しい思い出もたくさんできた。でもね……  真凛の姉として作られたナホだから。置いて行ったあなたのことをゆるせなかった。だって本当に悲しかったもの。  ナホが目を開けると辺りが暗くなっていた。暗いというより真っ暗闇。どうしたことだろう。  あぁ、もしかしたら、やっと真凛たちの元へ行けるのかしら? あら、でも、アンドロイドは天国ヘ行けるのかしら、ね。  ナホの体に異常が発生したことを報せる通知が研究所に届いた。研究員が急行してナホを素早く回収した。研究所でナホの故障箇所を修理しても、ナホは目覚めることはなかった。 END
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