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中には、他に人の気配はなかった。
本当に1人なのだろうか……
お茶を淹れてくれているようだから、一応手伝おうと思い、大河に伝えてからキッチンへ行く。
母が使っていたそのままの配置だ。
湯呑みを出して、お茶を3人分淹れて、大河の元へ運ぶ。その間も特に何も話さない。
「ありがとう」と言う大河
「いただきます」と父にも言う。
「あ、どうぞ」
皆んな一口飲んでから……
「お父さん! 美桜さんと結婚させてください!」
「あ、はい。本人同士がそれで良ければ……」
「ありがとうございます。では、本日提出したいので、婚姻届の証人欄にサインをお願いします」
なんだか淡々と進む。
もちろん、反対などされても困るから、これで良いのだけど、父はこの先どうするのだろうか? と、やはり気にかかる部分もある。
大河も気になったのか、それも聞いてくれた。
「お父さんは、お一人でお住まいなんですか?」
興味津々で父の顔を見る。
「うん、そうだね。でも、いずれ老いて行くわけだから、一緒に住みたいと思っている人はいる」
──やっぱり! と思った。
「美桜が許してくれるなら、その人と一緒になりたいと思っている」と言われた。
「あの人?」
「そうだ!」
「別にお父さんの人生なんだから、好きにすれば良いんじゃない?」
「本当に?」
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