『死ぬ』ということ

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 この葬儀の数日前、母が突然倒れた。母がパートで勤めている弁当屋の店長から、俺のスマホに何度も着信があった。  基本的に仕事中はスマホを持っていない。昼休みにスマホを確認したとき、あまりにも多い着信に、何かが起こったことを直感した。  俺は病棟の師長に事情を話した。師長はすぐに帰るよう配慮してくれた。同僚に詫びを入れて、俺は母が担ぎ込まれた病院へと急いだ。  くも膜下出血。母を診察した医者がそう言った。今も余談を許さない状況らしい。その言葉を、俺は呆然と聞いていた。  数日経っても、母の容態は改善する兆しを見せなかった。自発呼吸はするものの、意識は一向に戻らない。ただ悪化することもなく、平衡状態は今も続いている。  そんな時に出会った副院長の死。その姿は、どう回避しようとも、母の姿と重ならざるを得なかった。
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