『死ぬ』ということ

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 人の死を悼く感じるようになった。  最近は特に。  副院長とは、言葉を交わしたことはあれど、決して親しい仲ではなかった。相手は副院長で、こちらは平の介護福祉士だ。考えなくても分かる。俺からすれば雲の上の存在。  それでも悲しかった。20の頃にはなかった感覚。副院長に限らず、ニュースで流れる殺人事件、虐待、交通事故の類でも同じだ。いちいち、悲しくなる。  どうしちまったのだろう?自分でもよくわからない。死に敏感になってる。  介護士という仕事柄だろうか。俺にできることはないのか?そんな大それたことを考えてしまう。一介の介護士にできることなんて限られているのに。  いろいろと考えたところで、結局行きつくのは『目の前の人を大切にする。必死になる』ということだった。  目の前にいる患者さんや家族、仲間のためにこの身を使う。いつも着地点はそこだった。
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