アンハッピー・ハッピー・チェーンメール

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「あ、下村君だ!」  声をかけられた方へ振り返ると、そこには上島の姿があった。  やっぱり来たんだ、なんて言われて、僕は思わずむっとする。やっぱりってなんだよ。 「ね、せっかくだからさ、手、繋ごう?」  僕の内心を知ってか知らずか、上島は能天気に笑いながら僕に手を差し出す。  僅かに躊躇った後、僕は手を差し出す。  が、一旦繋いだ手を、上島は振り解いた。 「手袋、邪魔なんだけど」  ……やっぱり変な奴だ。  僕は渋々手袋を外し、再び手を繋ぐ。上島の手は随分と冷えていて、ぼんやりとしていた僕の意識を現実へと連れて行く。  なんだか気恥ずかしくて、僕は少し咳払いをしてから、「ところで」なんて呟く。 「ずっと気になってたんだけど、あのメール、変えていったの上島さんだよね」  尋ねると、上島は特に悪びれた様子もなく、 「あ、バレてた?」  そう言ってにこやかに笑った。 「だってさー、下村君全然信じないんだもん。意地になるじゃない?」  僕のせいだってのかよ。しかしその意地がいまや、この校庭を覆い尽くす人数にまで繋がっているのだ。恐るべく執念。  僕と上島が繋いだ手の反対側にも、老若男女関係なく人がどんどんと繋がっていき、まるで一本の鎖のようだった。鎖は校庭だけに留まらず、更に伸びて伸びて、校門を飛び出してずっと繋がっているようだった。とんでもない話だ。
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