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元通りの教室、そして絵
教室に入ると、クラスメイトは難しい表情をしながら私に近づいてきた。
「その絵、どうしたの?」
「また昨日描き直したんだ。難しいかと思ったけど、案外元通りに出来たよ。だから全然大丈夫」
「さすが佐伯さん!」
「昨日のと全然変わんないよ」
「私にも描いて〜!」
大丈夫なんだと理解したクラスメイトは、波のように言葉を飛ばしてきた。クラスは元の空気を取り戻したように思える。そんなクラスメイトの壁の隙間から、徳井くんが見えた。
徳井くんはこちらのクラスメイトの集合体をチラチラ確認しながら、席に座っていた。
話しかけてあげようかなと、思った。
もう気にしてないよ。大丈夫だよ。
そう言ってあげようかなと、思った。
しかし、そこで無常にもチャイムが鳴った。
本宮先生が教室に入ってくる。
「佐伯。絵の方は大丈夫か?」
「はい。上手く描き直せたので、大丈夫です」
そう言って、徳井くんの方をチラッと見ると、目が合った。
徳井くんはすぐに目を逸らしてしまった。
「それは良かった。じゃあ、朝の会始めていくぞ、号令」
起立。礼。着席。
赤く染まっていない私の絵が見守る中、
昨日と同じような1日が、始まった。
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