管制との交信

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……しかし、123便からの応答はない。 これでは手の打ちようがない。 まずは、緊急着陸(ディセンド)の手配を進めなくては。 123便はレーダー誘導を要求してきていた。 「伊豆大島のレーダーで誘導する。進路を真東(090)に維持せよ」 すると、123便から返信が来た。 『現在、操縦不能(アンコントロール)』 「操縦不能、了解」 なんと、123便は操縦不能になっているとのこと。 ただのエンジントラブルとは事情が違うようだ。 東京航空交通管制部(コントロール)では、無線通話をスピーカーで流し、職員全員が聞こえるようにした。 管制室は騒然となる。 「123便、操縦不能。緊急着陸のため羽田に向かっている」 緊急着陸なので、他機と区別がつくように識別コードを与える。 「123便。識別コード、2027を発信せよ。降下可能か?」 『了解。現在降下中』 「名古屋空港が近いが、そちらに行くか?」 『いいえ。羽田空港への着陸を希望します』 「了解。以後、日本語でよろしいですから」 『はいはい』 機長も我々も日本人だ。 緊急事態ということで、英語ではなく日本語での通信に切り替えた。 この方が話しやすいはずだ。 緊急着陸では無線での連絡が重要だ。 しかし、東京コントロールへの無線は、同じ周波数を他の飛行機も使用している。 そこで、周波数を変更することを123便に提案した。 「123便、周波数を134.0に切り替えられますか?」 返信がない。 繰り返し、応答を求めるも、やはり返事がなかった。 123便では、今、何が起きているのか。 周波数の変更も難しい状況なのだろうか。 やむを得ない。 他の飛行機の周波数の方を変えてもらおう。 東京コントロールは、付近を飛行しているすべての飛行機に向けて発信する。 「123便以外のすべての航空機は、東京コントロールへの連絡は周波数134.0で行うこと。なお、別途指示があるまで無線通信は極力、控えること」
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