フライトレコーダー

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航空機関士(フライトエンジニア)は言った。 「油圧機器の圧力(ハイドロプレッシャー)を見てみませんか?」 そのとき、機体が大きく傾いた。 機長は副機長に言った。 「手動操縦(マニュアル)でやっているんだ。傾き(バンク)、戻せ」 「戻りません!」 副機長が答えた。 機体は傾いたままである。 その時、航空機関士は機体のある異常に気が付いた。 「油圧(ハイドロ)が落ちています」 「全部だめ?」 「はい」 油圧が下がっているということは、フラップなどに動力を伝えることができないということ。フラップの上げ下げなどの動作が行えない。 昇降舵や補助翼も動かすことができない。つまり、操縦することができないということだ。 あと、原因不明であるが、客室の与圧が下がっているため酸素マスクが下りてきている状態である。 機体高度を下げなくてはいけない。 「降下(ディセンド)!」 機長は副機長に指示する。 航空機関士も同意する。 副機長が復唱する。 「降下(ディセンド)!」 機長は東京航空交通管制部(コントロール)に連絡。 「緊急事態発生。当機は羽田空港に戻ることを要求する。高度は22000フィート(6700m)まで降下し維持する」 『了解(ラジャー)』 操縦が極めて難しい状況だ。 伊豆大島のレーダーサイトを頼ることにした。 「レーダー誘導を要求する」 『右旋回するか? 左旋回するか?』 「右旋回」 『了解。進路を真東(090)に保て』 こうして、当機は羽田空港に戻ることにした。
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