フライトレコーダー

3/9

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
その頃、123便の客室には警報が鳴り響いていた。 与圧が低下したため、自動的に酸素マスクが降りてきていたのだ。 チーフパーサーは、乗客に呼びかける。 「酸素マスクを付けてください。シートベルトは必ずしてください」 乗客は動揺を隠せない。 目の前に酸素マスクが降りてきている。 緊急事態であることを受け入れざるを得ない。 機体は大きく傾いており、不安定な飛行になっていることは誰の目にも明らかであった。 左右に最大で60°も傾斜し、窓から地面が見えた時に悲鳴を上げる乗客もいた。 機械による自動音声が、客席に繰り返し流れている。 「ただいま、緊急降下中。マスクを付けてください。ベルトを締めてください。タバコは消してください。ただいま、緊急降下中……」 客室乗務員が座席を回り、酸素マスク装着の点検をしていた。 小さい子供は自分では付けることが難しい。 乗務員や近くの大人たちが装着を手伝っている。 機体の揺れは、だんだん大きくなってきた。 手帳に遺書を書き始める者もいる。 しかし、揺れがひどくなっていき、字を書くのも難しくなってきた。 気を失っている者もいる。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加