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その頃、123便の客室には警報が鳴り響いていた。
与圧が低下したため、自動的に酸素マスクが降りてきていたのだ。
チーフパーサーは、乗客に呼びかける。
「酸素マスクを付けてください。シートベルトは必ずしてください」
乗客は動揺を隠せない。
目の前に酸素マスクが降りてきている。
緊急事態であることを受け入れざるを得ない。
機体は大きく傾いており、不安定な飛行になっていることは誰の目にも明らかであった。
左右に最大で60°も傾斜し、窓から地面が見えた時に悲鳴を上げる乗客もいた。
機械による自動音声が、客席に繰り返し流れている。
「ただいま、緊急降下中。マスクを付けてください。ベルトを締めてください。タバコは消してください。ただいま、緊急降下中……」
客室乗務員が座席を回り、酸素マスク装着の点検をしていた。
小さい子供は自分では付けることが難しい。
乗務員や近くの大人たちが装着を手伝っている。
機体の揺れは、だんだん大きくなってきた。
手帳に遺書を書き始める者もいる。
しかし、揺れがひどくなっていき、字を書くのも難しくなってきた。
気を失っている者もいる。
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