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一方、操縦席には、東京コントロールからの無線が入っていた。
『123便、緊急事態宣言ということで、よろしいか?』
「その通りです」
機長が応答した。
「123便、どのような緊急事態か報告せよ」
しかし、コックピットでは高度を下げることに注意を払っており、返信ができなかった。
「ハイロドプレッシャー、オールロス!」
航空機関士が報告する。
フラップなどを動かすための力を伝える油が、すべてなくなってしまったということだ。
「オールロスですか?」
副機長は、信じられないといった声を出す。
「オールロス」
航空機関士が答える。
操縦は絶望的となった。
東京コントロールからの無線だ。
『伊豆大島のレーダーで誘導する。進路を真東に維持せよ』
「現在、操縦不能」
機長は答えた。
レーダー誘導をしてもらおうにも、こちらは操縦ができなくなっている。
『操縦不能、了解』
機体の角度が急に上を向いた。
機長は副機長に声を荒げる。
「失速するぞ、本当に!」
「はい……」
「はいじゃないが!」
「はい……」
「下げろ!」
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