12歳

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「家のことしか頭にないお父様のことだもの。きっと他の女の人と結婚してDomの子供を産ませるに決まってる」  せせら笑いを含んだその言葉に、はっきり違うと言えないことがつらい。確かにご当主様は昭人さまに対してあまりにも関心が薄い。それは奥様、つまり昭人さまのお母様が亡くなられた後は益々その傾向が強く、もはや昭人さまを気に掛けるご親族はほぼいないと言っていいだろう。そんな昭人さまが不憫で仕方がない。幸いにもご兄弟はいらっしゃらないが、そのぶん期待が大きいのだ。 「ねぇ、金田」 「はい、何でしょう昭人さま」 「金田だけは、僕のこと何があっても見捨てないよね」  おもむろに顔を上げた昭人さまと目が合う。眦には堪えきれない涙が浮かんでいた。私は思わずその小さな体を抱きしめて安心させて差し上げたかったが、すんでのところで何とか堪えた。その代わりに、昭人さまほど上手にできないがにっこりと笑って見せる。 「もちろん。金田はずっと昭人さまのお側にいます」 「本当だね。約束だからね」 「はい。昭人さまのことは私がお守りします」  しがない使用人風情の私が、こんな約束を軽々しくしていいはずがないことはわかっている。しかしそんなことを考える間もなく、私の口は、心は、昭人さまを守ると宣言していた。能力のない私ができるのは、この大きな体で昭人さまを守り、時には盾になることしかできないのだから。
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