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1 水面の色
机の上のタブレットをオフにして、うーんと背伸びをしてみた。
椅子の上で大きく身体を反らせベランダの外に目を遣ると、水面がキラキラと輝いているのが、金沢賢人の目に飛び込んできた。夏の終わりの時期の海は今日も眩しい。
窓から見える海面には、濃い色と薄い色のところがある。その色の違いは、雲が映っているのか、魚群がいるからかと想像していたら、実は違うのだと教えられた。
「あれはね、風のある所と無い所で色が違ってるんだよ」
最上階の大浴場の男湯は、いろんな大人が賢人に知らないことを教えてくれる場だ。水面の色のことは、ヨットが趣味の高崎さんに聞いた。3時ピッタリの大浴場のオープン時間に行けば、高崎さんには大抵は会える。一番風呂が命の気の良い人だ。
とある海の町に建つ唯一のマンションのオーナーには、様々な人がいるらしい。住民の1/3は実際に居住している人で、1/3は近くの街に住んでいて休日をここで過ごす人、残りが離れた都会に住んでいて連休などに来る人だと誰かが言っていた。
世の中にはゴースト化したリゾートマンションも多いが、ここは珍しく現役バリバリで稼働しているんだそうだ。
買う人の多くは、最上階にある大浴場からの眺めに一目惚れしたからというのが定説になっている。温泉ではないが露天風呂とサウナを完備した大浴場は週替わりで男女が入れ替わり、檜風呂と岩風呂の両方が楽しめる。
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