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賢人も露天風呂から出て、福井さんがさっきまで座っていたベンチに場所を移した。この場所は風が抜けるので、火照った身体が冷えて気持ちがいい。
赤紫色の夕景の中で、ボーッと海を眺めていると、レポート作成でカンカンに熱を帯びていた頭の中が、解れていくようだ。
あのふたり……もしかして…………かな。
空を見ていて、ふと先日の駐車場の人たちのことを思い出した。どちらもスタイルが良く、あかぬけた雰囲気の若い男の人だった。所謂イケメンだ。正直に言えば、すごくカッコよかった。
ターと話をしたときは、気のないような言い方をしたが、簡単に見抜かれてしまった。賢人が少しポーッとなったのは事実だ。あの時ターとした話になんとなく煽られている。
俳優かどうかは分からないが、もしかしたら映画関係の人たちなのかもしれない。なぜマンションの駐車場にいたのかは分からないが……。
……明日、やっぱフェリー乗り場に行ってみようかな。
テレビとか芸能界とかあまりその手のことには興味のない方のつもりだったので、そんな物見高い自分が珍しいなと思い、賢人は少し変な気分になった。
もう一度会えると良いな、と思っていない訳はない。あんなにかっこいい人たちなんだから、そう思うのは仕方がない。
何を言い訳してるのか、自分でもよくわからなかった。
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