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「見学不可だってさ。誘っておいて、ごめんなー」
「そうなんだ……」
「こっそりスマホで撮ろうとした人がいたらしくて、ダメになったらしいよ。ついさっきスピーカーで案内されちゃった。人だかりもすぐに解散になると思う」
「ああ」
それなら仕方がない。当たり前だ。というか、撮影を公開しているわけでもないのだから、スタッフさんにとっては、やじ馬の自分たちは邪魔でしかないのだろう。
そう思ったら、あまり残念な気分にもならず、むしろ迷惑を掛けなくてよかったという心境になった。
それよりも、賢人は福井さんと気楽に話が出来たのが嬉しかったし、福井さんという人が真面目そうな見た目に反して意外と物見高い性格なんだということを知ったのが面白かった。何事も悪いことばかりじゃない。
遠目にでも、なんとなく華やかな雰囲気を味わえて、それでよかった。有名な芸能人を見てみたかった気持ちはあるが、テレビや映画もあまり見ない自分は、そもそも俳優さんもよく知らない。見て嬉しくなるかもわからない。
隣のおじさんと話をしている福井さんに目礼し、賢人が引き返そうとすると、撮影隊の端にいる人が、なんとなく自分の方を見てニコニコしているのと目が合った。
白タオルを首から掛けた背の高い人だ。何となく見覚えがある。
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