6 ロケ現場の手前で

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 あ、駐車場の……スポーツマンの人だ。見覚えがあるはずだ。それに、あの晩にしたターとの恋バナ?の記憶も、まだ生々しい。  その人は首から掛けたタオルに手を掛け汗を拭きながら、自転車の横に立つ賢人の方にやって来た。隣に来るとつい見上げてしまい、オドついてしまった。遠目でみているよりも、ずっと背の高いのを実感してしまう。 「学校をサボって見に来たの?」  かっこいいと思っていた人に、さわやか系の笑顔でいきなりそんな言い方をされてしまい、賢人はちょっとガッカリした。 「……違います」 「ん、中学生は今授業だろ?」  中学生に間違われるのには慣れているが、何故かいつも以上に凹んだ。そこまで年は違わないはずなのに……というか、小柄で子どもな自分に対する劣等感のようなものを、必要以上に感じてしまった。  この人、雰囲気からいって大学生くらいだろうか。高1の賢人にとってはすごく大人だ。それも、マンション住人の福井さんたちのようなガッツリ大人ではなく、年上でも仲間で認識しているターとも違う。背伸びをしても少し届かないくらいの距離感がある。 「……僕は中学生じゃないです。高校生です」 「え、そうなの? でも、今9月だから高校だって新学期がスタートしてるよな。授業があるんじゃない?」 「通信制だから、大丈夫です。オンデマンドで授業が受けられるから、今日の分はもう済ませたんです」 「あ、そう。へえ、便利だね」
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