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あっさりとそう返されたが、さわやかな笑顔の上に、何故かニコニコが増し増しで加わってきた。目が合うと、さらに微笑まれてしまう。賢人は、一層どうしたらいいか分からなくなった。
「便利ですよ。タブレットでもスマホでも……」
「いつでも、どこででも出来る?」
「……そうです」
「だよね。そう聞いてる」
「えっ?」
「俺の幼稚園時代からのツレも、通信制で高校を出たんだ。そいつから話をいろいろ聞いていて、俺もそれなりに知ってるよ」
「……そうなんですか」
意外だった。一方で、だからごく自然な受け止め方なんだと納得した。
でも、こんなカーストが高そうな人の友だちが、引っ込み思案な自分と同じ高校生活を選んだのかと思うと、不思議な気持ちになる。なんとなくもっと話が聞いてみたくなった。
そんな賢人の気配を察したのか、スポーツマンは「ドリンク飲む?」と自販機の方を指さした。
「いいんですか?」
「ん? 何が?」
「……あの撮影の人なんですよね? 僕と話してても大丈夫なのか……」
「ああ。いいのいいの。俺の今日の仕事は、片付けの手伝いくらいなんだ」
スポーツマンさんは、自販機の口から取り出したスポーツ飲料をホイっと賢人に投げると、タオルで自分の汗を拭いている。
ドキンとした。見ていて眩しいのは、日差しのせいだけじゃない気がする。それに、人見知りであるはずの自分が、なぜこの人とこんなにスラスラ話をしているんだろう。
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