2 昼休みの駐車場

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 ドラッグストアだが、食品もひととおり揃っているから、田舎暮らしにはありがたい。夕食の買い出しも兼ねて、ひとっ走りしてくるかと思い立った。今日は雲が出ていて、それほど日差しは強くなさそうだ。  賢人は大柄な方ではない。童顔なのもあって、未だに中学生に間違われる。  ここに来た当初は、昼間に街を自転車で走っていると不審がられるときも結構あった。でも、頑張って自分から挨拶をしていたら、いつの間にか賢人が自転車で走っているのが当たり前になって受け取られ、今では何となく町の一部になった気分だ。  ここに引っ越すまでは、地方大都市のど真ん中にあるマンション暮らしで、1階に食品スーパーが入っていたような生活をしていたのだから、努力をしないと生活必需品が手に入らないなんて、体験したことが無かった。  賢人の母親はいつも忙しい人だったので、必要に迫られて小学生の頃から続けていた自炊もどきが、一人暮らしを本格的にするようになってからも役立っている。こんなことになるとは、自分でも想定外だったが。  荷台にエコバッグ一杯分の食品を積んで買い物から戻り、賢人が自転車置き場に向かうと、珍しい場面に出くわした。  広い平面駐車場にサングラスをかけた若い男性が二人、マンションを見上げて立っているのを見つけたのだ。  二人とも背が高く、遠目にもあか抜けた立ち姿なので目を引いた。一人は少し髪を伸ばしたスラリとした人で、もうひとりはスポーツマン風な人だ。
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