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そもそも、このマンションは昼間の人の出入りが少ない。それに、仕事で来るような人はみんなスーツや作業着を着ている。なんとなく異質な感じがした。
休日だったらリゾマン利用の人たちが、遠くの都会からも遊びに来る。そういう人は、それなりに華やかな雰囲気の人たちが多い。雰囲気が違いは賢人でもわかるのだ。
でも、今は平日の真っ昼間だ。こんな人たちがここにいるなんて珍しい。賢人はつい立ち止まって観察するように見てしまった。
そんな様子に気がついたのか、スポーツマンが賢人の方をはっきりと向いて微笑み、軽く手を振った。それを見て、もうひとりも賢人の方を振り向いた。
わっ、気付かれた。
そう思うと、途端に賢人はぶわっと恥ずかしくなり、慌ててエントランスに逃げ込んだ。
もしかして、ジロジロ見てたことで賢人が不審者扱いをしたと思われたのかもしれない。でも、知らない人が敷地内にいるのだから、不審者だよな。良いのかな……。
管理人さんに一言言っておいた方がいいだろうかとも思ったが、こういうときに限ってエントランス脇の受付には、『掃除作業中』の札が掛かっていて、誰もいない。……だったら仕方がない。
賢人はそのままエレベータで自室のある6階まで上がり、ドアの前の通路から駐車場を見下ろしたが、もうさっきの二人組はいなかった。
何だったのだろう。でも、……ちょっと格好いい人たちだった。
ま、所詮自分には関係ない。もう会うこともない。
そう思い直すことにした。忘れて、さっさと昼飯にしようと頭を切り替えた。
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