3 遠くにいる友だち

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 ターは、賢人にとって初めて具体的に出会った同種の人間だ。あからさまにそういう話をしても大丈夫な相手と知って、親友になった。 『ラブの予感、する?』 「しない」 『嘘だあ。賢ちゃん、絶対ちょっといいなって思ったでしょ?』 「……ないよ。つーか、もう会うこともないかもだし」 『でも、マンションの人かもしれないよ? だったらいいね』 「…………かな?」 『ほ〜ら、やっと本音が出た! 賢ちゃん、ツンだからなあ』 「ひでー」  ターとする恋愛話は、楽しい。半分は妄想も交じって、それこそマンガの主人公になったような気分になることもある。  ターは、少し前に大学生と付き合うようになったらしい。だから、最近浮かれている。2歳年上だと、やはり何事も賢人より先に経験してしまう。賢いヤツなので、あからさまな自慢はしないが、する話の端々が何気に賢人は羨ましい。  賢人はまだ誰かと付き合ったことは無い。もちろん中学生の頃から、なんとなくカッコいいなとか好きだなと思った相手がいたことはあるが、男が男にそんなことを思っても、何か進展があるわけがない。  逆に、気持ちがバレてイジられでもしたら、面倒この上ないということは、子どもでも分かる。だから必死で隠してきた。  昼間、一瞬見かけただけのイケメン2人をネタにして、誰とでも出来るわけじゃない話をする。こんな話が出来るなんて、むちゃ楽しい。ターと知り合えたのは、ラッキーだ。
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