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(えと、ここ何階だろ?)
部屋からでて通路をキョロキョロ見渡すと、忙しそうに早足で歩いて行く数人の看護師と一瞬だけ視線が合う。看護師から部屋から出てはいけないと言われた訳でもないのに、何故だか悪いことをしてるみたいでドキドキする自分がいた。
(まるで、スノードロップのあの日みたいだな)
親に内緒で、湖のほとりまで雪についた足跡を何度も振り返りながら雪斗に会いに行ったことを思い出す。
エレベーターの前を通り過ぎれば、壁に『3』の数字が見えた。
(あ、ここ、3階なんだ)
私は天井にぶら下がっている案内板を見ながら、突き当たりの角を左に曲がっていく。
早く雪斗に会いたい。
談話室は、二十畳ほどの広さだが、左奥の片隅にご年配の男性が一人、本を読んでいるだけで誰もいない。そういえば点滴を外してくれた看護師が、もうすぐ夕食を持ってくると話していた。食事中の人が多いのかもしれない。
(雪斗とゆっくり話せそうでよかった)
私は、談話室の入口から一番近い右手のテーブルに腰を下ろそうと近づいた。
「あれ?……美織ちゃん?」
──えっ?
その声に直ぐに振り返ると、私は呼吸が止まった。
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