第3章 見えない足音

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「と、友也……」 思わず、雪斗から身体を離そうとしたが、雪斗は、構わず私を抱きしめ直した。 「初めまして、待野雪斗です」 友也は、こちらを見て、大きく目を見開いている。 「名前なんて聞いてない。美織から離れてもらおうか」 今まで見たことない程の冷たい声色で、そう言うと、友也は、雪斗の目の前に立ち、視線を合わせた。  「嫌だって言ったら?」 「何だって?」  友也が、グイッと雪斗の胸ぐらを掴み上げる。 「やめて、友也!」 私は、慌てて、友也の腕にしがみつく。こんな風に他人に対して、敵意を剥き出しにする友也は、初めて見る。 「なぁ、アンタじゃないのか?」 雪斗の言葉に、友也が怪訝な顔をした。 私は、雪斗と友也を交互に見ながらも、うまく言葉が出てこない。雪斗は、手紙や写真を送っているのが、友也だと思っているのだろうか。 「何のことだ?美織は、僕の婚約者だ!二度と近づくな!」 「ダメッ、友也!」 友也は、私の制止も聞かずに、私の腕を振り解くと、そのまま雪斗を殴り飛ばした。 「雪斗っ!」 雪斗は、コンクリートの上に転がって、唇の端から血が滲んでいる。 「痛って、ムキになるとこ見ると図星かよ!」 雪斗に駆け寄ろうとした、私の手首は、すぐに友也に掴まれる。
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