第3章 見えない足音

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「友也っ、痛いっ!離して、雪斗が!」 「離さない!美織、帰るよ!」  友也は、私を引き摺るようにして二階へと階段を上がっていく。 「美織っ!」 雪斗が、立ち上がると階段を登りかけていた私の手首を掴んだ。 「離せ!美織に触るな!」 友也が、振り返り激昂する。こんなに怒りに満ちた友也は、本当に友也なのか分からない程に、別人みたいだ。 「美織、俺と帰ろ」  「雪斗……」 思わず雪斗の掌を掴みそうになる。でも、これ以上、雪斗に迷惑をかけられない。今の友也は、何をするか想像がつかない。 私は、雪斗の手をそっと振り解いた。 「雪斗……ごめんなさい……大丈夫、だから」 「美織っ、でも!」 「本当に……大丈夫だから」 私は、自分に言い聞かせるように、その言葉を吐いた。 「何かあったら、すぐ連絡して!」 私は、小さく頷く。友也は、私の手首を強く握りしめ、前だけを見ながら、鼻で笑った。 「何、勘違いしてるんだろね」 「友也……」 今の友也は、私の知ってる友也じゃない。怖くないといえば嘘になる。でも、友也ともちゃんと話さなけれいけない。 もう、今の気持ちのままでは、友也と一緒には居られないから。 「鍵あけてよ」  「うん」 鍵を開けながら、もう一度、雪斗の方を振り返ろうとした私を、友也は、強引に玄関扉へと引き込んだ。 そして、友也は、リビングの電気も点けず、黙ったまま、私をソファーに座らせた。
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