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「友也っ、痛いっ!離して、雪斗が!」
「離さない!美織、帰るよ!」
友也は、私を引き摺るようにして二階へと階段を上がっていく。
「美織っ!」
雪斗が、立ち上がると階段を登りかけていた私の手首を掴んだ。
「離せ!美織に触るな!」
友也が、振り返り激昂する。こんなに怒りに満ちた友也は、本当に友也なのか分からない程に、別人みたいだ。
「美織、俺と帰ろ」
「雪斗……」
思わず雪斗の掌を掴みそうになる。でも、これ以上、雪斗に迷惑をかけられない。今の友也は、何をするか想像がつかない。
私は、雪斗の手をそっと振り解いた。
「雪斗……ごめんなさい……大丈夫、だから」
「美織っ、でも!」
「本当に……大丈夫だから」
私は、自分に言い聞かせるように、その言葉を吐いた。
「何かあったら、すぐ連絡して!」
私は、小さく頷く。友也は、私の手首を強く握りしめ、前だけを見ながら、鼻で笑った。
「何、勘違いしてるんだろね」
「友也……」
今の友也は、私の知ってる友也じゃない。怖くないといえば嘘になる。でも、友也ともちゃんと話さなけれいけない。
もう、今の気持ちのままでは、友也と一緒には居られないから。
「鍵あけてよ」
「うん」
鍵を開けながら、もう一度、雪斗の方を振り返ろうとした私を、友也は、強引に玄関扉へと引き込んだ。
そして、友也は、リビングの電気も点けず、黙ったまま、私をソファーに座らせた。
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