第3章 見えない足音

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「美織、今の誰?」  窓辺からの仄かな月明かりが、友也と私を静かに照らす。 「会社の人……」 「ただの会社の人じゃないだろう?」  本当に、目の前の友也は、友也じゃないみたいだ。こんな尋問めいた言い方をするような人じゃなかった。いつも穏やかで優しくて、そんな友也しか見てこなかった私は、声が震える。 「……最近異動してきて、仕事でペアを組んでるの。それで、今日はたまたま送ってもらって……」 友也が、ククッと笑った。 「そんなこと聞いてないよ」 「とも、や?」 「雪斗って呼んでたよね?ただの同僚を呼び捨てするのって普通かな?僕は、違うとおもうんだけど」 「……ごめん、なさい……」 友也は、私の頬に触れた。 「昨日、どこ泊まってたの?」 私は、視線が揺れる。 友也は、さっきの私と雪斗の様子から、私が和の家に泊まってないと、きっと、気づいたんだろう。 「……言えない……」 顔は、引き攣り、身体はすでにカタカタと小刻みに震えている。 「……そんな怖がってる顔されると……僕も辛いから……」 友也は、私をそっと包み込んだ。 「彼とはもう2人きりで会わないで。会社も、辞めて構わない。もう結婚しよう。来月にでも、親に合わせるから。全部……許すから……美織を不安にさせた僕の責任だから」 「結婚……?会社も辞めてって……私、まだ辞めるつもり……」 「いいから。僕の言う通りにしてよ。美織は、ずっと僕の側にいればいい」 「どしたの……急に……それに……私……もう友也と」
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