第3章 見えない足音

37/40
1609人が本棚に入れています
本棚に追加
/301ページ
俺は、会社の事務所に美織宛に届いていた手紙を拾い上げる。手紙は、パソコンで作成されていて、筆跡は、分からない。 ただ、美織の隠し撮り写真は、俺の家から営業所に着くまでが撮られてるという事から、手紙とこの写真を、美織に送った人物は同一人物の可能性が高い。 「そう言えば……あの、トモヤって奴の声……?」 今日、初めて会ったが、何故だか、どこかで聞いたことがあるような気もする。 そして、俺に向けた、あの瞳は、初めて会ったにも関わらず、激しい憎しみや怒りを孕んでいた。 ーーーーブーッ、ブーッ ふいに震えたスマホを、俺は、相手先も見ずに慌ててスワイプした。 「もしもしっ!美織!?」 『こんばんは』 (え?……) その声は、ヘリウムガスで変えられていて、男か女か分からない。 俺は、思わずスマホを耳から一瞬、離して液晶画面を確認する。 (非通知設定だ) 「誰だ!お前か?!手紙と写真送ってきてんのは!」 相手は、ふっと小さく笑った。   『美織に近づくな』 「何っ……誰だお前!」 『警告はした』 「美織に指一本触れてみろ!俺は、お前を許さない!」 俺の言葉が、言い終わるか終わらないかのタイミングで話中音が、聞こえてくる。 「クソッ!」 俺は、美織の名前を液晶画面に浮かべると、迷わずタップした。
/301ページ

最初のコメントを投稿しよう!