第3章 見えない足音

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ーーーー怖かった。あの手紙も写真も友也も。  私は、雪斗から借りたワンピースを、涙が止まらない瞳に押し当てた。 「ひっく……雪斗……早くきて……」 ガチャリと扉が開く音がして、すぐに聞き覚えのある、少し高めの声が、玄関先から聞こえてくる。 「美織っ、美織!」 ソファーで友也のジャケットとキャミソールを巻き付けて、ワンピースに顔を(うず)めていた、私が、顔を上げるのと、雪斗に抱きしめられるのが、ほぼ同時だった。 「ひっく……雪斗」 「ごめんっ……ごめんな……美織を無理矢理にでも連れて帰れば良かった……」 雪斗は、すぐに自分の着ていた黒のスウェットを脱ぐと私に着せる。着せる時に、ちゃんと視線を胸元から外して着せてくれる雪斗の優しさに、涙がまた転がる。 「怖かっ……た……友也が……全然知らない人みたい……で」 「うん……ごめんな……本当にごめんな」 雪斗は、私の首元に顔を埋めながら、何度も背中を、摩ってくれる。 雪斗は、聞かない。 私の姿を見れば、友也に何をされたのか分かったはずなのに。ただ、ごめんを繰り返す雪斗の言葉に胸が痛くて、張り裂けそうだ。雪斗が、私の手首をそっと撫でた。 「痛む?」 見れば、友也のネクタイで縛られていた手首は、抵抗して暴れたせいで、少し擦れて赤くなっている。
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