第3章 見えない足音

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「大丈、夫……私ね……」 雪斗は、私の瞳から涙を掬うと震える体を、だきしめた。 「何にも言わなくていいから……美織、まだ、寒いよな……寝室から毛布持ってきてもいい?」 顔を上げれば、雪斗は、私にスウェットを着せたせいでTシャツ姿だ。私との電話を切ってすぐに上着も着ずに、駆けつけてくれたんだろう。 「雪斗……風邪引いちゃう」 「俺、健康だけが取り柄だから、馬鹿は、風邪引かないしね」 私を安心させるように、ふっと笑うと、雪斗が、私を横抱きにした。 「雪斗っ……」 「美織こそ風邪引かせたくないから」 雪斗は、寝室の扉を開けると、私をそっと下ろして、すぐに毛布を巻きつけた。 「寒くない?」 「雪斗も……入って……寒いから」 「いや、でも」 「……お願い……」 私は、掌を、雪斗に差し出した。 「えと、じゃあ……お言葉に甘えて……」 雪斗は、私の手を取ると、隣にゴロンと寝転んで、私と一緒に毛布を被った。雪斗の匂いと体温を感じる毛布と一緒に包まれて、身体の震えは、ようやく少しずつ収まっていく。 「添い寝して……俺が……美織の寝袋になれたらいいんだけど」 雪斗が、私の背中を抱き寄せ、私も、雪斗の背中に手を回した。 「雪斗……あったかい」  「俺もあったかいよ」 そして、雪斗は、私の髪を漉くように何度も何度も優しく撫でてくれる。
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