1633人が本棚に入れています
本棚に追加
「え?」
「俺の名前も、白いもの、ついてるでしょ。雪」
ーーーーどくん、と心臓が大きく跳ねる。
雪斗の声が、重なる。あの日の、あの子に。
私は、騒ぎ出した胸元を握りしめていた。
「ぷっ、ごめん、嘘。困らないで」
「えと……」
「今は、これで充分」
雪斗は、私の頭をくしゃくしゃと撫でると、またハンドルを握った。
何だろう。
どうしてなんだろう。
雪斗と一緒にいると、忘れてしまっている凍った記憶が、溶け出すような感覚がする。
『……じゃあ、おれのなまえは……』
あの日見た、真っ白なスノードロップの花と共に、あの男の子の声が聞こえた気がした。
最初のコメントを投稿しよう!