1650人が本棚に入れています
本棚に追加
「眠ったな……」
俺は、美織の髪を漉きながら、長い睫毛が閉じられたのを確認してから、起き上がった。
美織は、疲れてたんだろう。一緒にチャーハンを食べて、シャワーを浴びると、俺にくっついてすぐに眠ってしまった。
「ブカブカだな」
美織に俺のスウェットを貸したが、小柄で華奢な美織は、手足の裾を三重に折り曲げている。
『もう、雪斗の手足ながすぎっ』
窓辺から差し込む月明かりと一緒に、美野里の声が、聞こえてくる。
「まさか……美野里が……」
俺は、美織の胸元にそっと掌を添えた。僅かに掌から感じる鼓動に美野里との思い出が、溢れてきそうだ。
「俺は……美野里の心臓を美織が、持ってるから、惹かれるのか?」
今まで、何故美織にこんなに惹かれるのか理由が分からなかった。こんな偶然があってもいいのだろうか。まさか美野里が、ドナーとして心臓を提供していたなんて、さらには、その心臓が、美織に移植されてたなんて、誰が想像できただろうか。
「だから美織に惹かれてる?……この気持ちは本当に、それだけか……?」
美野里の心臓が、美織の中で生きているとして、でも、美織は、美野里じゃない。
俺の中の膨らんだ想いは、美野里に向けていたモノと美織とでは、外見はよく似ていても、根っこは全くの別物だと思う。
言葉ではうまく説明出来ないが、もっと何か心臓の偶然だけじゃない、強い運命のようなものを感じるのは気のせいだろうか。
俺は、美織の白く柔らかい頬に触れる。
最初のコメントを投稿しよう!