第5章 美野里のストーカー

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「美織……側に居て」 俺は、もう誰も愛せない、そう思っていた。 でも俺の心の中には、いつのまにか根づいた種から、芽がでるように、気づけば美織の存在が大きくなってしまって、もう片時も離れたくない。 美野里の心臓が、美織と生きているのなら尚更、俺は、美織から離れられない。 ずっと側にいて、今度こそ守ってやりたい。 「展覧会で何かわかれば良いけどな」 美織へのストーカー行為が、美野里の事件と繋がっているのだとしたら、犯人は、多分、俺に近い、もしくは、俺に関係のある人物な気がしてならない。 そして、犯人は、美野里の心臓が、美織に移植されているのを知っている人物だ。 (となると……) 俺は、美織の寝顔を見つめながら、橘友也の顔を思い浮かべていた。 「ともくん、か……」 美織から聞いた、橘友也の机の引き出しから美野里の盗撮写真が、出てきた事を考えると、 橘友也は、おそらく美野里の口からよく話に出ていた『ともくん』で間違いないだろう。 ただ、分からないのは、橘友也が、美織にストーカー行為を行っていたと仮定して、結果的に美織を失うことは、本望ではない筈だ。 そして、美織が話していたように、それは、桃葉にも同じことが言える。 (桃葉が、話していた、あの男……) ーーーーあれは、桃葉と、橘友也だったのだろうか? 俺と美織を引き離そうと、手を組んだ? しかし、裏目に出て結果的に失敗に終わったのか? あの時、桃葉と会議室で話していた男の声は、低く途切れ途切れだった為、イマイチはっきりと聞こえなかった。脳内再生を試みるが、橘友也の声の気もするし、そうじゃない気もして断定はできない。 ただ、気になったのは、桃葉が美織に言った一言……。 ーーーー『美野里さんを殺したも同然なんだから』
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