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「美織……側に居て」
俺は、もう誰も愛せない、そう思っていた。
でも俺の心の中には、いつのまにか根づいた種から、芽がでるように、気づけば美織の存在が大きくなってしまって、もう片時も離れたくない。
美野里の心臓が、美織と生きているのなら尚更、俺は、美織から離れられない。
ずっと側にいて、今度こそ守ってやりたい。
「展覧会で何かわかれば良いけどな」
美織へのストーカー行為が、美野里の事件と繋がっているのだとしたら、犯人は、多分、俺に近い、もしくは、俺に関係のある人物な気がしてならない。
そして、犯人は、美野里の心臓が、美織に移植されているのを知っている人物だ。
(となると……)
俺は、美織の寝顔を見つめながら、橘友也の顔を思い浮かべていた。
「ともくん、か……」
美織から聞いた、橘友也の机の引き出しから美野里の盗撮写真が、出てきた事を考えると、
橘友也は、おそらく美野里の口からよく話に出ていた『ともくん』で間違いないだろう。
ただ、分からないのは、橘友也が、美織にストーカー行為を行っていたと仮定して、結果的に美織を失うことは、本望ではない筈だ。
そして、美織が話していたように、それは、桃葉にも同じことが言える。
(桃葉が、話していた、あの男……)
ーーーーあれは、桃葉と、橘友也だったのだろうか?
俺と美織を引き離そうと、手を組んだ?
しかし、裏目に出て結果的に失敗に終わったのか?
あの時、桃葉と会議室で話していた男の声は、低く途切れ途切れだった為、イマイチはっきりと聞こえなかった。脳内再生を試みるが、橘友也の声の気もするし、そうじゃない気もして断定はできない。
ただ、気になったのは、桃葉が美織に言った一言……。
ーーーー『美野里さんを殺したも同然なんだから』
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