第5章 美野里のストーカー

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俺は、受付の人からもらった資料で四つのエリアに分けられた展示室を確認する。 四つのエリアは、それぞれ被写体が、動物、景色、植物、人物に分けられている。 「美織、1番奥が、人物エリアだから、先に植物エリア行こう。俺の見せたい」 「うん、楽しみ」 「あ、ちなみに、展示は、全員、本名じゃなくて、イニシャルだけだから、俺見つけて」 美織が、すぐに俺を見上げると、嬉しそうに笑う。俺は、そっと掌を解いた。 「推理して当てるの得意なの、見つけてみせるね」 「当たったら、飯奢る」 美織は、すぐ気づいたのか、恥ずかしそうにしている。 「バレた?そ。美織と飯食いたいだけ。ちなみに、残念賞も、俺と飯な」 クスクスと美織は、声を抑えて笑うと、すぐに植物エリアの写真達を、端から丹念に眺めていく。 (これで美織がもし、俺の作品に気づいてくれたら……) ちゃんと美織に告白しよう。 俺は、そう決めていた。 出会ってからの期間なんて関係ない。互いに何故惹かれるのか。そんなの分からない。でも、美織を想う気持ちに嘘は、ないから。 だから、理由なんて探す必要はない。
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