第5章 美野里のストーカー

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美織が、足を止めたのは、額装されたA3の写真の前だった。 イニシャルは、『M』。 他の写真に比べて、華やかさもなければ、色味も鮮やかな原色系ではない。 「……これ……」  美織は、そう小さく呟くと、食い入るように暫く見つめてから、俺を振り返った。 「雪斗の写真、綺麗……」    ーーーー(みおり!) 俺の中の誰かが、叫ぶ気がした。 もう二度と美織を手放さないように。 離れないように。 俺は、跳ね上がる心臓をそのままに、美織の隣に並んだ。 「……綺麗だろ、雪景色とスノードロップ」 「……どこで……撮ったの?」 「これは、実家の近く。毎年は帰ってないけど、俺、一人っ子だからさ、親に顔見せに。これ撮った日、日差しが、黄身がかっててさ。真っ白な雪景色が、お日様の絨毯みたいで、思わず撮ったんだ。側に咲いてたスノードロップが、ちょうど花開いてて、撮らずにはいられない景色だったから」 「うん……ずっと見てられるね。不思議だけど、この景色なんだか、すごく懐かしくて。雪の降る街なんて住んでたことないのにね」 美織が、俺の掌に小さな掌を重ねようとして慌てて離した。 「あ、ごめんなさいっ。私、無意識に……」 「いいよ。俺も繋ぎたい」 俺は、美織の掌を掴むと指先を絡めた。 「じゃあ晩飯、何食べたいか考えといて。じゃあ、人物エリアで確認してかえろ」 「うんっ」 美織が俺を見上げながら、目を細めた。 その時、ポケットのスマホが震える。 さりげなく確認すれば、液晶画面に浮かび上がっているのは、『非通知設定』だった。 「雪斗?どしたの?」 「あ、ごめん、仕事の電話。ちょっと先に見てて、すぐ戻るから」 「うん、分かった」 俺は、慌てて会場を出ると、すぐにスマホをスワイプした。
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