第5章 美野里のストーカー

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(雪斗、大丈夫かな) 慌てた様子で会場を出て行った雪斗を見ると、仕事のトラブルだろうか? (私にも何かできたらいいんだけど……) 基本、営業アシスタントの仕事は営業マン達から依頼された資料を取り寄せたり、纏めたり、営業マンを補佐をする仕事がメインだ。いざという時、商品知識も浅く、営業マン達の力になりきれないのがもどかしい。 私は、小さくため息を吐き出すと、人物エリアの写真を端から順番に見ていく。 「……これも違うな……」 私の盗撮写真から、言えるのは、被写体を中心とした、光の角度は、大体45度辺りで、必ず、中心より左寄りに写してある。また、全身写真は、一枚もなく、全て腰から上にピントを合わせて撮影されている。 何より特徴的なのは、全て横顔だということ。 ただ雪斗の言う通り、焼き鳥屋の店主である勇気達、27期生の作品と思われる写真は、横顔だけ撮影したものが多い為、私の盗撮写真と同一人物のものが紛れて居るのか、素人の私では判断できそうもない。 (雪斗……まだかな?) 気づけば、数人いた、他の観覧者は、いつの間にか居なくなっており、広い人物エリアのコーナーには、私一人きりだ。 (集中、集中っと……) 自分の盗撮写真を頭に思い浮かべながら、ひたすら、写真から写真へと目を移動させていく。 「……あれ?」 私は、違和感を感じて一枚の写真の前で立ち止まった。 「聖母マリア像……」 大学内の教会前に佇んでいたマリア像に間違いない。光の角度は、45度。マリア像を真横から撮影している。更には、マリア像を左寄りな配置していて、盗撮写真と酷似している。 撮影者のイニシャルは……『M』   ーーーーその時だった。 「ンンッ!ンーーーーッ!」 目の前は、遮られ、口元を誰かの掌で覆われた。
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