第5章 美野里のストーカー

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「美織!ごめん、遅くなって!」  振り返れば、雪斗が、私に駆け寄り、すぐに私の頬に触れる。 「雪斗……?」 「何にも、されてないよな?」 「え?どういう事……?」 すぐに雪斗が、私を抱きしめた。 「良かった……さっきの電話……非通知設定だったんだ……」 驚いて雪斗を見上げると、雪斗が、私が目の前にいる事を確かめるように、後頭部をそっと撫でた。 「雪斗……何か話したの……?」 「あぁ。声はヘリウムガスで変えられてて分からなかったけど……美織にこれ以上近づいたら……美織を傷つけるって言われて……マジで、焦った……」 雪斗の声が少し震えている。私は、雪斗の背中を摩った。 「大丈夫だよ……写真見てただけだし。誰も来なかった……あと、盗撮写真と似た写真も見当たらなかったし」 「なかった?俺も端から見ていい?盗撮写真と似た雰囲気の写真、どっかで見たことある気がしてさ……。ん?美織の後ろの作品ってマリア像?珍しいな」 マリア像の写真の真ん前に立っている私は、マリア像の写真が、雪斗の視界に、しっかり入らないように、すぐに出口を指差した。 「ごめん、雪斗、お腹減っちゃった」 「え?あぁ……ま、減ったよな」 「手がかりも残念ながらなかったけど、雪斗の写真見れて嬉しかった。ありがとう」 私は、さりげなく雪斗の手を引くと出口に向かって歩いていく。雪斗が、マリア像の写真に気づく前に、この場から立ち去らなければならない。 「美織が、喜んでくれたなら良かった……じゃあ、大学の近くに美味いラーメン屋あるから行こっか」 「うん」 雪斗には、言えなかったが、はっきりしたのは、桃葉が、私のストーカー事件と関わっていること。 そして、同じタイミングで雪斗にかかってきた電話……。 ーーーー犯人は、二人いるという事だ。
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