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第1章 初恋のスノードロップ
あれは、5歳の冬だった。一人暮らしをしていた祖母が亡くなり、お葬式で家族で雪の降る街に、行ったことがある。
まだ小さかった私は、大人ばかりの会食が退屈で、お寿司を二つの口に放り込むと、祖母の家から、すぐ近くの湖のほとりまで、こっそりと散歩に出かけた。
長靴で、地面を踏み締める度にサクサクと沈む白い雪が気持ちよくて、自分の足跡を何度も振り返りながら、湖のほとりにたどり着いたのと覚えている。
『おいでよ』
声が聞こえて、少し視線を横に流すと、同じ歳ほどの男の子が、雪の中しゃがみ込んで手招きをしている。
私も、雪を踏み締めて歩きながら、男の子の隣にしゃがみ込んだ。
名前は知らないけれど、見たことない綺麗な雫型の白い花が、雪から顔をだして咲いている。
『きれいだね』
思わず、私は笑みが溢れた。
私には、まるで降り積もった雪の中から、生まれた真っ白な雪の花のように見えた。
男の子は、切長の瞳をニッと細めた。
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