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第6章 忘れられない初恋
「お腹いっぱい」
美織が、お腹に手を当てながら、にこりと笑う。俺達は、大学近くのラーメン屋で夕飯を食べると、電車に乗り、最寄り駅から、美織の家に向かって、ぶらぶらと歩いていた。
「コスパ最強だよな。ラーメンに半チャーハンが、ついて780円とかさ」
「私のは野菜ラーメンだけだったから、530円だったよ」
「安っ!」
俺の顔を見ながら、美織が、声を上げて笑った。なんて事ない話も、飯も美織が隣にいるだけで、満たされる。美織が、いれば何もいらない、そんな風にさえ思う自分がいる。
「あ、雪斗のアパートついたから、もうここで大丈夫だよ」
「あのな……んなことできる訳ないだろ。ただでさえ、美織が、心配なのにさ」
俺は、立ち止まりかけた美織の手を引くと、美織のアパートに向かって歩きだす。美織の掌は、小さくて、冷たい。
「冷たいな。身体冷えてない?大丈夫?」
「あ、うん。元々冷え性なの。雪斗こそ、私に体温取られちゃうよ」
「俺、体温高めだから、全然平気。むしろ美織に分けてやるよ」
美織が、すぐに頬を染めた。冷たかった美織の指先は、俺の皮膚から伝わる血液の温もりで、じんわりと熱が伝導して、体温を取り戻していく。
(帰したくないな)
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