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「雪、斗……?」
雪斗の高い体温と匂いに、胸が、激しく音を立てていく。こんなに苦しい程に雪斗に抱きしめられたのは、初めてかもしれない。
「……雪斗……苦しいよ……」
「美織だったんだな……」
耳元から聞こえてくる、雪斗の声とさっき言葉に、雪斗の表情が重なって、私の中の運命という名の淡い期待が、小さな足音を立ててやってくる。
雪斗は、少しだけ身体を離すと、私の手に持っているスノードロップのキーホルダーを、そっと撫でた。
「……ひっく……」
途端に、目の前が、泡になる。雪斗の顔が滲んで、瞳から溢れるものもそのままに、私は、雪斗に両手を伸ばしていた。
「雪斗っ……」
「美織」
雪斗が、すぐに抱きしめてくれる。心臓と心臓が重なるように、互いの鼓動が音を立てて、叫び合う。
そして、あの日、一緒に見たスノードロップの景色が、昨日のことのように一瞬で蘇ってくる。
「美織、ごめんな……気づくの遅くて」
「……違う……私も……分かんなくて……ひっく……」
雪斗は、止まらない涙を救いながら、ふっと笑った。
「初恋は、実らないなんて嘘だったんだな」
「ひっく……雪斗……」
「俺だけ見て。もう離さない」
重ねた唇は、甘くて心地よくて、ずっとこうしていたくなる。
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