第7章 迫り来る影と守りたい人

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「こんなとこで会うなんてね」 黒のパーカーにデニム姿の男が、こちらにゆっくりも近づいてくる。    「あれ?怪我してるの?大丈夫?」 私は、ゆっくりと後退りしていく。 鼓動は一気に早くなる。背格好、話し方、そして──赤髪。 分からなかった犯人の素顔が、男の赤髪を見た瞬間に重なる。彼が犯人だと脳の中から細胞達が一気に私に警鐘を鳴らす。 「……勇気さ、ん?……」 「あ、覚えててくれてたんだ?」  「……その……髪の毛……」 私は震える指先で勇気の髪の毛を指差した。 「ん?髪の毛?あ、前会った時はタオル巻いてたからわかんなかったよね。俺、大学ん時から、赤髪トレードマークでさ。雪斗から聞いてない?……俺なんか興味ない?」 勇気が、短い前髪を指先でつまみながら、あははと笑った。 「……どうして、此処に?」 「あぁ、ちょっと親が体調崩してて、その……おお見舞いってやつ?」 勇気は肩をすくめると、私との距離を詰めてくる。 (お見舞いなんて嘘……また私を拉致しに……) 「こない、で……」 そうだ。昨晩襲われた時、勇気の焼き鳥店は体調不良の張り紙がしてあり休業日だった。それに雪斗と焼き鳥屋に行ったとき、勇気について雪斗が話していた事を思い出す。 ──前田勇気は写真サークルの27期生だ。イニシャルはM。 「え?何?何?そんな泣きそう顔しないでよー」
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