第1章 初恋のスノードロップ

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『なぁ、スノードロップってしってる?』 『なぁに?それおいしいの?』 確か私はそう言った気がする。 男の子は切長の瞳を細めてケタケタ笑うと 『このはなの、なまえだよ』と教えてくれた。 (スノードロップ……)  『たしかにゆきでできたドロップみたいだよな』 その時、私を見ながら無邪気に笑った顔に心臓がとくんと鳴った。 そのあと、数日私が祖母の家にいる間、時間を見つけてはその男の子と湖で待ち合わせて遊んだ。 雪景色も雪だるまもスノードロップも都会育ちの私には珍しいモノばかりで、真っ白な世界は何もかもが新鮮だったのを覚えている。 その日も雪の中で二人して頬を赤らめながら、雪玉を投げ合って遊んでいた時だった。ふいに胸が苦しくなる。 『ケホケホッ』 しゃがみ込んだ私を男の子が慌てて駆け寄ると心配そうに覗き込む。私は生まれつき心臓が弱く、時々こうして発作を起こすことがあった。 『だいじょうぶ?くるしいのか?』 こくんと頷くしかできない私を、男の子はそっと抱き寄せるの背中をトントンとしながら、頭を撫でた。 『だいじょうぶ。これ、しんだおれのかあさんがやってくれたんだ。すぐなおるから』 不思議だった。大丈夫の言葉と、男の子の心臓の音ですごく安心していつの間にか発作は収まっていた。 『ありがとう』 私は男の子の切長の瞳を見つめながらお礼を言った。男の子は頭を掻くと、ニッと笑って私も思わず笑っていた。
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