第1章 初恋のスノードロップ

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その男の子との楽しい時間はあっという間に過ぎて、明日は自宅に戻る日になっていた。 『そっか。もうあしたからあそべないんだな』 『うん……』 男の子は寂しそうな顔をした。私もほんとはもっと一緒に遊びたかった。もっと一緒に居たかった。 『なぁ、これやるよ』 男の子がポケットから取り出して差し出したのは、小さな雫型の白い石だった。 『わぁ……』 『まえ、みずうみのほとりでみつけたんだ、スノードロップみたいだろ?たべられないけどな』 『ありがとう!ずっとだいじにする』 男の子は少しだけ恥ずかしそうにしながら頭を掻いた。男の子の笑った顔を見ると自然と笑顔になって心がふんわりする。 『ねぇ、なまえおしえて』 『わたしはみおりだよ』 『みおり。もしまたあえたら、おれのおよめさんになって』  『え?』  心臓がとくんと鳴って、男の子の無邪気な笑顔に心がきゅっとなった。心臓の発作じゃない。発作よりもずっとあったかくて、優しい気持ちでそれなのにドキドキしたのを覚えている。 『うん』  『じゃあ、おれのなまえもいっとくな、おれのなまえは……』 そう言って男の子は、私をぎゅっと抱きしめた。お日様みたいな優しい匂いがした。 あの子の名前は何て名前だっただろうか。 どんな顔してただろう。 今思えば私の初恋だったのだろう。未だに忘れた頃に夢の中に彼は現れる。 『みおり。おれのなまえ、スノードロップといっしょだからな。ちゃんとおれのことまってて』 意識はゆっくりと雪が溶けるように、雪がふわりと舞い上がるように緩やかに浮上していく。 ーーーーピピピッと鳴った目覚ましを止めると、私はゆっくりと瞳を開けた。 (久しぶりに見たな。スノードロップの夢)
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