第1章 初恋のスノードロップ

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季節は、11月に入ったばかりだ。それなのに、冬に咲くスノードロップと、あの男の子の夢を私は未だに見ることがある。 あの時、あの男の子からもらったスノードロップは、本当に雪の飴玉みたいに綺麗で今だに見ていても飽きない。 光に透かせば乳白色の石の中に太陽の光が差し込んで、あの日から寸分違わずキラキラと虹色に光っている。 私は誰にも言わずに自分の中の小さな秘密にしているが、あの日、男の子からもらったスノードロップに小さく穴をあけて自宅の鍵のキーホルダーにしている。 ーーーー懐かしい、遠い昔の淡い初恋の思い出だ。今頃、あの男の子は何処で何をして誰を愛しているんだろう。そんなことを考えて可笑しくなった。 「初恋は、みのらないっていうのは本当だね」 小さく独り言を呟きながら、隣を見れば長い睫毛を揺らした、恋人の橘友也(たちばなともや)が、気持ちよさそうに眠っている。 寝室の壁掛け時計を見るとまだ6時前だ。ちょうどいい、起きて朝ごはんを作ろう。 友也を起こさないように私の身体に回された腕を持ち上げて潜るようにして体制を変える。 「……み……の…り」 (みのり?……あ、美織か) 私は、クスッと笑った。いつもは、私より早起きの友也はまだ眠っている。 私はそっと掌を伸ばして友也の暗めの茶髪に手を伸ばした。友也は地毛が元々少し明るく、太陽の光に照らされてオレンジ色に見える。 私は、私の名前を呼びながら眠る友也の姿を愛おしく思いながら髪を撫でた。
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