第1章 初恋のスノードロップ

5/35
前へ
/301ページ
次へ
ーーーー僕は、夢を見ていた。 シックな黒のワンピースに白いコートを着た美野里(みのり)が、白いコートを羽織っている。僕はあの日と同じように手を伸ばしていた。 『美野里、待って!』 『いやっ、離して』 僕は、力一杯、美野里の手首を掴み直した。 「行かない、で……」 お願いだから僕の側にいて。 じゃないと僕は……。 美野里ーーーー。 布団を捲り上げて、慌てて起き上がれば、僕は、夢を見ていたことに気づく。いつもこの時期に必ず見る夢だ。 「はぁっ……はっ……」 僕の呼吸は浅く早く、全身から噴き出るように汗をびっしょりとかいていた。思わずシーツに手を伸ばしながら、隣を見れば美織の姿はなく僅かに開いた寝室の扉の向こうに、キッチンで料理をしている美織の後ろ姿が見えた。 僕は安堵すると共に大きくため息を吐き出した。
/301ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1649人が本棚に入れています
本棚に追加