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とりあえず書こう
何も書いてなくてそろそろアイツに怒られそうなので、とりあえず筆を取ろうと思う。
でも、本当に書く内容が何一つ浮かばない。いや、内容がありすぎて何から書けばいいのやら、という状態だ。
だから、普段ならやらない仕事とか、後回しにしてた趣味がはかどってしまう。
さっきも部屋の掃除をしていたら、なくしものを見つけて「ラッキー!今日のオレ様超ツイてる!」みたいな感じで盛り上がっていたし、ずっと読みたくて詰んどいた書物も、今では綺麗に一掃されてしまった。
それはもう羽をのびのびと伸ばし切った生活を送っていたわけだ。本当は伸ばしてる場合じゃないのにさ。
まったく、オレ様も人間みたいになってて嫌になる。
平和ボケってやつかねえ。
それにしても、本当に何も浮かばなくて困っている。何度もペンを取るんだけど、肝心の本文は何も書けない。書くことが頭の中でぐるぐる回っていく。前までこんなことなかったのに。歳はとりたくないもんだ。
もういっそ、炎の中に突っ込んで生まれ変わってこようか…。
なんて、やめておこう。
ざっくりした内容で命令されると、自由度が高すぎて、逆に何をしていいかわからなくなる。
今まであった歴史を物語にしろって、一体どう書けばいいのやら。
時代を追ってまとめるのがいいのか、関係なく好きなとこから書けばいいのか。
好きなとこから書くのが自分の性に合ってるけど、出来事がありすぎて結局どこから書けばいいのかわからなくなる。
だからやっぱり、年代順にまとめることにする。
となると、世界の始まりから書くことになる。
そこら辺は記憶が曖昧だ。
三歩進んだら忘れる脳の持ち主にこんな仕事頼まれてもねえ…。
そもそも、オレ様は物語を書かなきゃいけないんだけど。
それじゃあ、歴史だけじゃダメってことじゃないか。
…そろそろ思考を放棄するかもしれない。
結局、何も進展がないまま数日が経ってしまった。
あれからずっと考えていた。
結論。
時系列ごとを基本に、大きい出来事があったら物語にまとめようと思う。だからまあ、どこから読んでもいいように書いていくつもりだ。
それと、歴史を基にした物語を書かなきゃなんだけど、つまり、それってノンフィクションってことだ。本当に過去を覗かなきゃいけないし、同時にそこに出てくる主人公的なやつの心情も覗かなきゃいけない。
膨大な時間を使う大仕事だ。
まあ、時間なんて無限にあるからいいんだけど。
そうと決まれば、今から早速覗きに行こう。
最初の主人公は『魔王』だ。
何てったってそいつが、このオレ様に、物語を作ることを命じたんだからね。
世界の始まりから、魔王の物語を見ていこうじゃないか。
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