魔界創世

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魔界創世

魔王は、すぐに10歳程度の子どもの姿にまで成長した。しかし、それでも威厳が足りないと考えた魔王は、自身の魔力を使って、一時的に見た目を青年の姿にまで成長させた。 そして、人間の醜い心の具現化である化物と、偽物の信仰生物たちを引き連れて地球とは一切関わりのない世界にやってきた。 魔王は何百もある種族の一つ一つから丁寧に話を聞き、いたわり、慰めながら自分が神にされたように、全員に人の姿を与えた。 しかし、神ほどの力はなく、完璧な人の姿にしてやることはできなかった。 が、「それはそれで種族の個性が出て面白い」と、魔王は満足気だった。 加えて、魔王はそれぞれの種族の特性に見合った能力を平等に3つずつ与えた。 魔王は異種族間で争いが起こってはいけないと考え、それぞれに平等になるように土地も分け与えた。それでも余るほど魔界は広かった。 魔界は地球とよく似ていた。陸と海があり空には太陽と月もあった。ただし、昼間の空の色は毒々しい赤紫色で不穏な雰囲気だった。 魔王は一番大きな陸地の中心に自分の城を建てることにした。 しかし、民のために魔力を使い果たした彼には城を建てる力が残っていなかった。 おまけに限界を超えて魔力を消費したため、青年の姿を保つことが出来ず、もとの子どもの姿に戻り、知能も見た目と同じくらいにまで下がっていた。 「お困りかい、ちっこい王様!」 そのとき、燃える炎を身にまとった大きな鳥が魔王に声をかけた。 「おまえ、だれ?」 子どもの姿を見られたくなかった魔王は鳥を睨みつけた。 しかし、鳥は気にもしない様子で頭上を飛びながら話を続けた。 「まぁまぁ、そんな怖い顔しなさんなって!オレ様は炎の不死鳥、またの名をフェニックス!神様に頼まれてお前さんを手伝いに来てやったんだ。歓迎してくれよ、魔王様!」 態度のでかい鳥だったが、炎をまとった羽が上下に揺れるたびに火の粉が舞うのが美しく、魔王はひと目で気に入った。 「火がいい。おしろに、火がほしい」 今の頭で思いつくだけの語彙で不死鳥に伝える。 「魔王様は火がお好きなんだな!いいねぇ、よし、わかった!炎が暴れるイカツイ城を作ってやるよ!」 そう言って不死鳥はくちばしで魔王の服の襟を掴むと一気に空へ舞い上がり、遠くの山まで来るとゆっくり下ろした。 「オレ様が城を作り上げるまでこの山で魔力を溜めとくんだよ」 そう言うと不死鳥は激しく燃えながら飛び去ってしまった。 数日経ってあっという間に城は完成した。たくさんの民が自分の村をあとまわしにしてまで協力してくれたのだ。 遠くの山で一人で完成を待っていた魔王にも不死鳥から知らせが届いた。 魔王は見た目は子どものままだったが、知力と魔力は完全に回復していた。 またもや不死鳥は魔王をくちばしで掴むと城へ飛んでいった。 空から見える城は、重力に逆らったような不思議な形をしていて、近くには火山とマグマの滝があり、城自体も紅く煌々と燃えていた。 「気に入ったぞ」 魔王は満足げに答えた。 返事をしようとした不死鳥だが、口を開くと魔王を落としてしまうので答えられず、もどかしくなり、さらに加速しながら城に向かうのだった。
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