魔王と不死鳥

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魔王と不死鳥

魔界はそれぞれの種族が持つ力を巧みに組み合わせて、大きく発展していった。特に、どの種族の者でも商売が許されている城下町は、たくさんの文化が入り混じって、とても賑やかだった。 しかし、すべてがうまくいっていたわけではなかった。 一部の種族は人間に対して復讐心を燃やしていた。 そういった者たちは魔王の治める土地を離れて海を渡り、遠くの島へと旅立っていった。監視対象ではあったものの、魔王は深追いしなかった。 魔王は完全な青年の姿へと成長した。雪のように真っ白な肌に、漆黒の髪、瞳、爪、服。まつ毛は長く、鼻は高く、頭から爪先まで非の打ち所のない美しい容貌だった。 「あれれ?キミ、また背が伸びたんじゃないかい?どんどんカッコよくなるねぇ。まあ、オレ様には負けるけど!」 魔王はうざったいといった様子で不死鳥を追い払う。 「バカ鳥は鳥らしく空でも飛んでいたらどうだ。私は今、大切な計画を練っているのだ。気が散るからせめてでも黙っていてくれ。黙らない場合、そのくちばしを粉々にする」 「まったく、怖いこと言うようになったよねぇ。魔力も前とは比にならないくらい強くなったし。でもさ、オレ様は壊れても死ねば元どおりだから関係ないのさ」 「そういえば、聞きたいことがある。不死鳥の種族はお前一人だけなのか?」 「そうさ。不死鳥は後にも先にもオレ様一人だけ。同種はいない。オレ様が唯一の個体。死なないから子孫を残す意味がないでしょ。魔王様もオレ様と同類だろう?」 「ああ。しかし、私は不死身ではない」 「嘘だろ!?それは初耳だ」 「寿命というものは存在しないが、死ぬときは死ぬ」 「…矛盾してないかい?」 魔王はそれ以上答えず、ただ鼻で笑うのであった。
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