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人間の愚行
拝啓
名前も、顔も、生きている時代も、世界も、種族もわからない君へ。
ここまでちゃんとついてきてる?
唐突になんだい?って感じだろうけど、オレ様も読み手を意識しながら書こうとしてるわけで、ちょっと呼びかけてみたくなったんだ。
はっきり言ってむなしい作業だよ。一方通行でさ。きっとこれはオレ様が知る由もない世界の誰かが読んでるんだろうけど。いや、読まれてない可能性だって十分ある。
それなのに書かなくちゃならない。
まだ、人間の言う「レポート」って課題の方が、読み手がいる分マシな気がする。
オレ様のこともここに書きたいけど禁止されていてできないし本当につまらない。
まあ、直接的にオレ様のことを書かなければ良いだけだから、ギリギリのラインは攻めさせてもらうけどね。
オレ様の偉大さを知ったら、きっと君も、足を向けて眠れないどころか、このオレ様にひれ伏すだろうに。
じゃあ、今日は他に思いつくこともないから、物語の続きを書いていくことにする。
生き残った悪と人間の話だけど。
何から話そうか。また混乱しそうだ。
じゃあ、まず、生き残った悪について見ていこう。
前にも話したけど、彼らは人間の負の感情が肉体を持った化物だ。人間の数だけ多種多様な化物がいたと言っていい。
けど、倒されてほとんどの種族が滅亡した。生き残ったのはほんの一握りの種族だけだった。
人間に負けて、彼らは本当に改心した。
改心と書いたけど、実際のところは人間に勝てないと諦めていたという方が正しい。
人間から生み出された化物なんかが、神が生み出した人間になど、到底及ぶはずがなかった。
そして、怪物たちは人間に手出しをしなくなった。
怪物たちは種族ごとに人里離れた土地で静かに細々と暮らした。
次に、人間側のことを見ていこう。人間は悪を倒してめでたしめでたしなわけじゃないか。それを書物にまとめたりなんかして、童話とか伝承が生まれたんだよ。
もちろんフィクションもあるけどさ。
問題はそこだ。
人間は欲望のカタマリになってしまった。だから、正義、勝利、そういったものを求め続けた。そして、それを効果的に示すためには、悪役が必要だった。でも、悪に勝って平和になった世界にそんなものは存在しない。
そこで目をつけられたのは改心した化物たちだった。
昔話とか童話とかで怪物は人間に討伐されるよね。怪物は邪悪で恐ろしい。かつてはそれが真実だった。でも、改心したはずの彼らも勝手に悪役にさせられて、罪を捏造されて討伐された。人間の利己的で歪んだ正義のために。
もちろん、人間の歴史では人間が正義だ。それこそがフィクションなんだけどね。
今日はちょっと難しく書きすぎた気がする。
要するに、人間は人畜無害な化物を悪役に仕立て上げて、それを倒すことで自らを英雄化していったんだ。
エゴだね。
人間の魂はどんどん穢れていった。悪だけじゃなくて、偽の神様まで生み出して、本物の神の存在すら忘れていった。
人間の魂の穢れが何につながるかわかるかい?
世界の崩壊だ。
神が下す正しい世界の終わりの前に、世界が滅びてしまう。
それを神はなんとしてでも止めたかった。しかし、自身に干渉する力は残っていない。
じゃあ、神はどうしたと思う?
ここでやっと魔王の登場さ。
書くの疲れたし、次回に続く。
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