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魔王誕生
人間の魂は穢れ、世界は神の望まぬ崩壊への道を進もうとしていた。
神は断腸の思いで決断をする他なかった。
封じられた悪魔の解放。
人間をそそのかし、神の力を奪った張本人である悪魔を頼りにするしかなかったのである。
神は悪魔の悪の部分だけを封印し、自我のみを解放することに成功した。
そして、神はその悪魔に人と同じく自分の姿を重ねた。
見た目は幼子になっていて歩くのもフラフラしていた。肌は餅のように柔く、見た目は愛らしく、とても悪魔には見えなかった。
「服はないのでしょうか」
知性はあるようで、舌ったらずながらも神様に尋ねた。
神は悪魔に新しい服を差し出し、こう言った。
「悪魔よ、けがれは封印した。今日からお前は私の造った世界とはまた別のところで、人間が生み出した者たちを民として従えなさい。そして、人間の世界を守り、正しい終焉に導くのです」
「かしこまりました」
悪魔はゆっくりとひざまずき、頭を垂れた。
そして顔を上げると、不敵な笑みを浮かべて言った。
「それでは、私は魔王と名乗り、その世界を人間の世界と対比して魔界と名付けましょう」
いぶかしげに見つめる神をよそに、小さな魔王はすぐに行動に移った。
魔王の頭の中にはやるべきことが膨大に浮かんでいたのであった。
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